国も公立中学の土日の部活について「地域移行」を進めるなどの対策に乗り出すなか、私学で新たな動きがあった。 東洋大牛久中学・高校(茨城県牛久市)を運営する学校法人・東洋大学と同校の教員1人が所属する労働組合「私学教育ユニオン」の間で、部活動の顧問への就任を教員の任意とする労働協約が締結された。ユニオンが11月22日、記者会見で明らかにした。 同ユニオンによると、こうした労働協約はおそらく全国初だという。 背景にあるのが、教員の部活指導だ。 平日の朝や放課後の部活指導が残業の要因になっているほか、試合などの引率で休日出勤が常態化している教員もいる。OECDが2018年に実施した調査によると、中学校教員の1週間の勤務時間のうち部活指導など「課外活動」に費やされる時間は、日本は平均7.5時間で、参加国平均の約4倍にのぼる。 こうした部活顧問への就任は任意であるものの、実質上「義務化」されている現状が問題視されてきた。 国も対策に乗り出し、2023年度から3年間をかけて、公立中学の土日の部活動を民間のスポーツクラブなどに委ねる「地域移行」を進めるとしている。 こうしたなか、今回、東洋大牛久中学・高校で結ばれた労働協約は、教員の部活顧問の就任は任意であることを確認するものだ。 協定ではその上で、顧問就任を断った教員に対して不利益な取り扱いをしない▽顧問を務める教員から負担軽減の求めがあった場合には指導員採用などの対応をする▽顧問就任は任意である旨を教員採用の募集要項に明記する──などと定めている。 労働協約は、同校で働くすべての教員約100人に適用される。 男性教員は部活顧問だった当時について、月曜から土曜までの放課後4時間、日曜の試合など部活指導にほぼ連日拘束されていたと振り返り、「部活動は教員のやりがい搾取」で成り立っているなどと訴えた。拘束時間の長さと疲労などから、授業の準備や生徒の進路指導もおろそかになってしまっていたという。 その上で、「授業のために時間を使いたい多くの教員のために、部活顧問任意制はすごく大きな意義がある」と語った。男性は現在、職場に復帰しており、部活の顧問は務めていない。 東洋大学の広報は24日、BuzzFeed Newsの取材に対し、「以前より附属校教員全体で負軽減を実現させるための検討を重ねており、今回その一つとして協約を結んだ。この取り組みが教員の働きやすい労働環境に繋がることを願っている」と語った。 ユニオン代表の佐藤学さんは、私学は部活動に力を注いでいる場合が多いと指摘し、「東洋大牛久中学・高校もスポーツが比較的盛んな学校。こういう学校で部活顧問が任意できるということは教育業界全体にも非常に大きな影響を与えると思う」と期待を語った。

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